日本国際看護学会誌
Online ISSN : 2434-1452
Print ISSN : 2434-1444
在日外国人に対する精神科看護援助の現状と課題:文献レビュー
半沢 亮太
著者情報
ジャーナル フリー HTML 早期公開

論文ID: 20251101

詳細
Translated Abstract

Objective

This study was designed to review earlier domestically and internationally conducted research examining mental health nursing for non-Japanese residents, and to clarify the current state and challenges of psychiatric nursing care for non-Japanese residents.

Methods

For the literature review performed in January 2025, search keywords were “non-Japanese residents,” “foreigners,” “psychiatric nursing,” and “mental health nursing.” The search period of 2006–2024 was set to include articles written in Japanese or English from four databases: Ichushi Web, CiNii, PubMed, and CINAHL. The inclusion criteria were original research articles in Japanese or English specifically examining mental health nursing for non-Japanese residents. After removing duplicates, the titles and abstracts were screened, with subsequent reviews of full texts to select relevant articles. Based on their thematic similarities, findings of the selected studies were coded and grouped into subcategories and categories.

Results

Among the 12 domestic studies identified, case studies were the most common, accounting for 6 articles. Only one study specifically examined community-based nursing support. The current state of psychiatric nursing care for non-Japanese residents was categorized into six themes: “Utilization of verbal communication,” “Utilization of non-verbal communication,” “Psychiatric nursing care provided fairly to non-Japanese residents,” “Culturally and religiously sensitive care,” “Collaboration with families and multidisciplinary teams,” and “Psychiatric nursing care provided by visiting nurses.” Challenges of psychiatric nursing care for non-Japanese residents were categorized into five themes: “Difficulties in building therapeutic relationships because of communication gaps,” “Lack of resources to overcome language barriers,” “Challenges in assessing psychiatric symptoms because of communication gaps,” “Anxiety and difficulty in family support among family members and community stakeholders,” and “Difficulties in explanation and understanding attributable to differences in legal systems.”

Conclusion

For non-Japanese residents to receive psychiatric nursing care fairly, findings from this study suggest needs for development of medical interpreting systems in psychiatric settings, for educational interventions to enhance cultural competence among psychiatric nurses, for further research elucidating the actual condition survey of foreign service-users by psychiatric home-visit nurses, and for creation of evidence-based guidelines.

目的

国内外の先行文献から在日外国人に対する精神保健看護学分野の研究を概観し、在日外国人に対する精神科看護援助の現状と課題を明らかにした。

方法

2025年1月に文献レビューを実施した。検索キーワードを「在日外国人」、「外国人」、「精神看護学」、「精神保健看護学」とした。検索期間は2006年から2024年、使用言語は日本語と英語で設定し、医中誌Web、CiNii、PubMed、CINAHLのデータベースで検索した。選択基準は、在日外国人の精神保健看護学分野に関する日本語もしくは英語で書かれた原著論文とした。重複文献を除外した後、タイトルと抄録を読み、全文を確認し、選択基準に合う論文を選抜した。選抜した論文の結果をコード化し、テーマの類似性に基づいて、サブカテゴリ―とカテゴリーに分類した。

結果

国内文献12編が抽出された。抽出された文献は、事例検討が6編と最も多く、その中で地域における看護援助に関する文献は1編であった。在日外国人に対する精神科看護援助の現状として、【言語的コミュニケーションの活用】【非言語的コミュニケーションの活用】【外国人患者へ公平に提供される精神科看護援助】【文化と宗教に配慮した援助】【家族・多職種との連携】【訪問看護師による精神科看護援助】の6カテゴリーが抽出された。また、在日外国人に対する精神科看護援助の課題として、【コミュニケーションギャプによる関係構築の困難】【言葉の壁を越えるリソースの不足】【コミュニケーションギャップによる精神症状の判断の困難】【家族と地域関係者が抱く不安と家族対応の困難】【法制度の違いによる説明と理解の困難】の5カテゴリーが抽出された。

結論

在日外国人が公平に精神科医療を享受できるためには、精神科医療機関における医療通訳の環境整備、精神科看護師に対する文化的能力向上の教育介入研究、外国人利用者へ精神科訪問看護師が行う実態調査とエビデンスに基づいたガイドラインの作成が求められる。

Ⅰ.背景

国際移住機関(International Organization for Migration[IOM])が発表した「WORLD MIGRATION REPORT 2024」によると、2020年における国際移民は約2億8,100万人で世界人口の約3.6%に当たると推定され過去最高を更新している(IOM, 2024)。また、日本においても、2023年末時点の在留外国人数は341万922人で、総人口の2.8%に当たり過去最高を更新している(出入国在留管理庁, 2024)。

移住はメンタルヘルスに大きな影響を及ぼす要因である(George et al., 2015)。また、移民は、精神保健サービスを利用する障壁があり(Saasa et al., 2021)、移民並び在日外国人は、ホスト国の人と比較しサービスを利用する割合が低く(Straiton et al., 2014; Takubo et al., 2020)、精神科病院への非自発的な入院の割合が高いこと(Del Favero et al., 2023; 花岡, 中西, 2023)が明らかになっている。実際に、言語や文化の違いを背景に多くの精神科医療機関が外国人患者対応に苦慮している現状である(厚生労働省, 2020a)。そのため、在日外国人のメンタルヘルスを公平に援助できる環境整備は解決すべき喫緊の課題である。

過去の在日外国人に対する精神保健医療の文献調査では、1990年代の時点で看護に焦点を当てた研究は皆無であった(岡田, 李, 1995)。また、2006年の文献検討では、対象者が入院患者に限定されており、地域における看護援助の研究が存在しないこと(武田, 鈴木, 2006)が明らかになっている。さらに、2006年7月以降では、在日外国人に対する精神看護学分野における体系的な文献検討は確認されなかった。そこで本研究は、国内外の先行文献から在日外国人に対する精神保健看護学分野の研究を概観し、在日外国人に対する精神科看護援助の現状と課題を明らかにすることを目的とした。

Ⅱ.研究方法

1. 用語の定義

在日外国人は、「a person with a nationality other than Japanese who have maintained a residence in Japan, and who was subject to the Basic Resident Registration Act(日本以外に国籍があり、日本に住所を持ち、住民基本台帳の適用を受ける者)」と定義する(李ら, 2018)。

2. 文献検索および選定方法

国内文献は、文献データベースである医学中央雑誌Web版、CiNii、Medical Onlineを、国外文献は、文献データベースであるPubMed、CINAHLを使用した。2006年7月から2024年12月までの間に出版された国内外の文献を対象とし、2025年1月21日に検索を実施した。検索式は、国内文献は、(「外国人」or「在日外国人」)and(「精神看護」or「精神看護学」or「精神保健看護」or「精神保健看護学」)とし、国外文献は、「immigrant」and(「psychiatric nursing」or「mental health nursing」)and「in Japan」で検索した。適格基準は、在日外国人を対象とした精神保健看護学分野における、日本国内で実施された研究であり、対象者、研究目的、および研究方法が明記されている原著論文とした。また、除外基準は文献検討とした。文献検索の結果、重複を除外した後にタイトルおよび要旨に基づく一次スクリーニングを行い、さらに全文精読による二次スクリーニングを経て、最終的に12編の文献を分析対象として採用した(図1参照)。

図1 文献抽出方法

3. データ抽出・分析方法

採用された文献から、著者、出版年、研究方法、研究対象者から得られたデータを分類した。また、採用された文献の研究結果から、在日外国人に対して看護師が実際に行っている看護援助の現状と精神科看護援助の課題に関する記述を抽出した。具体的には、現状は実際に行われている援助内容や看護師の対応や工夫に関する記述、課題は看護援助における困難や障壁に関する記述についての内容を抽出し、著者の意図を損なわないようにコード化した。そして、類似性のあるコードを統合し、抽象度を高めてサブカテゴリーを生成した後、同様の方法でさらなる抽象化を行い、カテゴリーへと統合した。データの抽出と分析は研究者1名が行った。分析結果については、研究者が所属する機関の指導教員と複数回にわたり照合および議論を行い、カテゴリーやサブカテゴリー名の適切性や解釈の妥当性を再検討することで、真実性の確保に努めた。

Ⅲ.結果

1. 採用文献の概観

1) 発行年数、研究デザイン、研究対象者

採用された文献の発行年数は、2009年から2020年であった。研究方法は、事例研究6編、質的研究4編、量的研究2編であった。採用された文献における研究対象者は、看護師を対象としている文献が5編、病院の患者を対象としている文献が5編、患者の診療録を対象としている文献が2編、看護師を含む多職種を対象としている文献が1編、地域の利用者を対象としている文献が1編であった。尚、採用された国内文献の一部は、患者の診療録と看護師、看護師を含む多職種と患者の診療録を含む文献があるため重複している。

2) 患者情報の分類

患者の年齢は、20代から70代であった。患者の病名は、ヘロイン依存症(奥田, 吉本, 2009)、統合失調症(東ら, 2012; 上地, 津波, 2017; 岡崎, 矢野, 2017)、急性精神障害(山田, 2013)、統合失調感情障害(野嶋ら, 2015)、双極性感情障害(林ら, 2015)、解離性痙攣(有馬, 2020)、急性一過性精神病(長澤, 中村, 2020)であった。入院形態は、措置入院1例(長澤, 中村, 2020)、医療保護入院2例(山田, 2013; 有馬, 2020)であった。患者の在留資格は、難民、喪失している(奥田, 吉本, 2009)、留学生(長澤, 中村, 2020)であった。家族は、日本人の妻(東ら, 2012)、日本語の話せる妹(上地, 津波, 2017)、夫(有馬, 2020)であった。患者の日本語能力は、日本の中学校を卒業している、日常会話ができる程度(奥田, 吉本, 2009)であり、その他多くの患者の日本語能力は乏しかった(東ら, 2012; 山田, 2013; 野嶋ら, 2015; 上地 , 津波, 2017; 岡崎, 矢野, 2017; 有馬, 2020; 長澤, 中村, 2020)。また通訳は、妻(東ら, 2012)、通訳者(野嶋ら, 2015; 上地, 津波, 2017)、学校職員(長澤, 中村, 2020)が行っていた。

2. 在日外国人に対する精神科看護援助の現状

 在日外国人に対する精神科看護援助の現状は、6カテゴリー、13サブカテゴリー、86コードが抽出された(表1参照)。以下、分類された各項目別にカテゴリーを【 】、サブカテゴリーを〈 〉で示し説明する。

【言語的コミュニケーションの活用】は、〈看護師による外国人患者の母国語の使用〉〈看護師による英語の使用〉〈看護師による通訳者の活用と連携〉〈看護師によるわかりやすい日本語の使用〉で構成された。【非言語的コミュニケーションの活用】は、〈看護師による非言語的コミュニケーションの活用〉〈看護師によるツールの使用〉で構成された。【外国人患者へ公平に提供される精神科看護援助】は、〈外国人患者への看護師の意識と態度〉〈外国人患者への精神科看護援助〉で構成された。【文化と宗教に配慮した援助】は、〈看護師による外国人患者に対する公正な対応への心がけ〉〈看護師による外国人患者の文化と宗教に配慮した援助〉で構成された。【家族・多職種との連携】は、〈看護師による地域関係者・多職種連携〉〈看護師による外国人患者の家族への協力依頼〉で構成された。【訪問看護師による精神科看護援助】は、〈訪問看護師による精神科看護援助〉で構成された。

3. 在日外国人に対する精神科看護援助の課題

 在日外国人に対する精神科看護援助の課題は、5カテゴリー、13サブカテゴリー、55コードが抽出された(表2参照)。

【コミュニケーションギャップによる関係構築の困難】は、〈外国人患者とコミュニケーションがとれないことによって生じる看護師の不安と自責〉〈看護師の外国人患者とのコミュニケーションの困難と苦手意識〉〈看護師と外国人患者との関係構築の困難〉〈看護師が外国人患者の病識がないと認識する〉〈看護師が外国人患者に対して抱く陰性感情〉で構成された。【言葉の壁を越えるリソースの不足】は、〈看護師の英語能力の不足〉〈看護師が通訳の活用困難による外国人患者への援助の苦慮〉で構成された。【コミュニケーションギャップによる精神症状の判断の困難】は、〈看護師が外国人患者の文化と宗教の理解不足〉〈外国人患者の言語や宗教の違いにより生じる看護師の精神症状の判断の困難〉で構成された。【家族と地域関係者が抱く不安と家族対応の困難】は、〈看護師の外国人患者の家族対応の困難〉〈家族・地域関係者が抱く外国人患者の退院後の緊急時対応についての不安〉で構成された。【法制度の違いによる説明と理解の困難】は、〈看護師が精神保健福祉法に係る制度や危険物の取扱いの説明の困難〉、〈外国人利用者の訪問看護制度の理解不足〉で構成された。

表1 在日外国人に対する精神科看護援助の現状

カテゴリー サブカテゴリ― コード 引用元
言語的コミュニケーション の活用 看護師による 外国人患者の母国語の使用 約束事を母国語と日本語で紙面に残し、患者、看護師ともにいつでも見られるように部屋に貼った (野嶋ら, 2015)
両国(日本語と母国語)の通訳ファイルの作成しスタッフと患者のコミュニケーション手段とした (上地, 津波, 2017)
入院診療計画書のように書面で提示するものに至っては、母国語に翻訳の上、説明と提示を行った (山田, 2013)
ヘルパーとの違いをわかってもらうために、母国語で「訪問看護師」を明記した (岡崎, 矢野, 2017)
いつでも相談できるように訪問看護やかかりつけ病院の連絡表を母国語で明記しておくなどの工夫を行った (岡崎, 矢野, 2017)
母国語がわかる電子辞書を借用し、多く使う言葉を妻に書いてもらい壁に貼って利用した (東ら, 2012)
曜日の認識が薄れていたため、ヘルパーや訪問看護の日、診察日など母国語で書き込んだ手作りカレンダーを作成 (岡崎, 矢野, 2017)
看護師による 英語の使用 ジェスチャーや英単語を用いて閉じられた質問を行い、その意思を確認した (山田, 2013)
英語のできるスタッフに協力を依頼して必要なケアを実施 (飯田, 前田, 2018)
看護師の言葉に対する姿勢(看護師が外国人患者の言葉や思いを理解するために、語学に対して努力していること) (小林ら, 2014)
語学能力のある看護師への応援要請 (小林ら, 2014)
(片言の英単語で訴える患者に対して)看護師の意図しない「言葉や意味の履き違え」が発生しないように、患者に声かけを行う前に「患者に伝えたいこと」を整理する。患者の会話で有用であった方法や、患者の訴えとその意味を看護師間で申し送り、共通認識しながら声かけを行うように努めた (山田, 2013)
看護師の言葉に対する姿勢(看護師が外国人患者の言葉や思いを理解するために、語学に対して努力していること) (小林ら, 2014)
日本語の字が読めないため、夫と相談して内服カレンダーを購入し、薬が一包化された袋にアルファベットでルビを記入して内服カレンダー管理を開始した (有馬, 2020)
看護師による 通訳者の活用と連携 通訳・関係機関の活用 (小林ら, 2014)
医療通訳者との連携 (西碕ら, 2016)
診療に看護師も同席し、確実に患者に治療者側の意図を伝達できるよう、通訳者を介して伝えた (野嶋ら, 2015)
看護師による わかりやすい日本語の使用 わかりやすい日本語で訪問看護内容、方法、何を支援するのかを具体的に説明した (岡崎, 矢野, 2017)
患者との援助場面ではジェスチャーを交えながら簡単な日本語を話していた (長澤, 中村, 2020)
簡単な日本語を意識した方が意思疎通を図ることができた (長澤, 中村, 2020)
患者は、動作だけでなく看護師同士で話している言葉も覚え、真似するようになった、そのため、日本語での会話を増やし、少しずつ日本語に慣れてもらうことも心がけた (山田, 2013)
わかりやすい言葉 (奥田, 吉本, 2009)
検温や頭痛などの医療用語を避けて、「熱、測る」や「頭、痛い」というように簡単な言葉に置き換えるように工夫していた (長澤, 中村, 2020)
非言語的コミュニケーション の活用 看護師による 非言語的コミュニケーションの活用 非言語的コミュニケーションの活用 (奥田, 吉本, 2009) (小林ら, 2014)(西碕ら, 2016)
患者の発する言葉のヒヤリングを行い、表情や単語の断片から患者の意図する欲求の推察を行った (山田, 2013)
看護をするにあたり、まず患者の疾患と状態についてと、治療の必要性を伝えるため、英単語とジェスチャーを交え、繰り返し説明を行った (山田, 2013)
患者の母国語での訴えに対しては、ジェスチャーなどを交えて意思疎通を図った (上地, 津波, 2017)
日本語とジェスチャー (飯田, 前田, 2018)
ジェスチャーで要件を伝える (東ら, 2012)
日本語とジェスチャー、筆記のみで病棟のルールや開放時間を伝えていった (野嶋ら, 2015)
看護師の対応の工夫 (小林ら, 2014)
ボディランゲージを取り入れたコミュニケーション (西碕ら, 2016)
不安感に対しては、アイコンタクトや、肩へのタッチング、手を握るスキンシップなどを交えながら看護に臨んだ (山田, 2013)
タッチングを取り入れたケア (西碕ら, 2016)
笑顔 (飯田, 前田, 2018)
不安の除去のため、笑顔を心がけた積極的な声掛けを行った (山田, 2013)
看護師による ツールの使用 インターネットを用いたコミュニケーション (小林ら, 2014)
視覚的なコミュニケーション媒体の活用 (西碕ら, 2016)
スケール表の活用した観察・評価(離脱症状の観察を行った) (奥田, 吉本, 2009)
「看護師がこれから話す言葉」「言葉の意味」を辞書で確認し、意図する内容が正しく伝わるように努めた (山田, 2013)
ストレングス・マッピングシートを代筆で記入 (有馬, 2020)
外国人患者へ公平に 提供される精神科看護援助 外国人患者への 看護師の意識と態度 事前情報をキャッチ (西碕ら, 2016)
患者の表情や言動から不調のサインを感じ取る (長澤, 中村, 2020)
看護師のリスクへの意識 (小林ら, 2014)
性別による不穏時の看護師の意識 (小林ら, 2014)
看護師の信頼関係への意識 (小林ら, 2014)
行動制限のある患者へのクリニカルジャッジメント (西碕ら, 2016)
安心感を与える態度 (西碕ら, 2016)
患者の示す態度や行動を理解する姿勢 (東ら, 2012)
外国人患者への 精神科看護援助 不穏時の複数対応 (小林ら, 2014)
男性看護師への応援要請 (小林ら, 2014)
OTの参加を促し患者の好きな編み物の導入を勧めた (上地, 津波 2017)
早期退院に向けての看護師ケア (小林ら, 2014)
患者の状況の振り返り (西碕ら, 2016)
患者の健康的な部分の強化 (西碕ら, 2016)
症状に合わせた介入 (小林ら, 2014)
患者の興奮時には一定の距離を取り、その行動を見守ることで受容的に受け止めた (山田, 2013)
患者に確実に伝えなければならないことは何かを話し合い病棟の意見を統一 (野嶋ら, 2015)
安全な環境を確保 (西碕ら, 2016)
衛生的な環境の提供 (西碕ら, 2016)
孤独さを感じさせない配慮 (飯田, 前田 2018)
文化と宗教に配慮した援助 看護師による 外国人患者に対する公正な 対応への心がけ 距離をとった (奥田, 吉本 2009)
外国人と日本人の対応差が出ないように意識していること (小林ら, 2014)
自らの陰性感情に気付き、その思いを看護師に話した (奥田, 吉本 2009)
外国人患者へのスティグマの対処 (西碕ら, 2016)
看護師による 外国人患者の文化と宗教に 配慮した援助 患者の食事の調整 (西碕ら, 2016)
食事の配慮 (奥田, 吉本 2009)
相手の文化・宗教に合わせた対応(食事) (小林ら, 2014)
母国の文化(衣食住)や習慣を取り入れた余暇活動 (西碕ら, 2016)
母国のライフスタイルを理解したセルフケア支援 (西碕ら, 2016)
患者の信念・価値・宗教などの受容 (西碕ら, 2016)
看護師の文化への意識(食事・宗教) (小林ら, 2014)
患者の異文化への共感 (西碕ら, 2016)
家族・多職種との連携 看護師による 地域関係者・多職種連携 多職種と連携した退院支援 (西碕ら, 2016)
関係者会議を行い、訪問時の状況・入院中の状況・かかわり方のポイントなどの情報交換を行った (岡崎, 矢野 2017)
多職種と患者状態悪化の原因追及 (西碕ら, 2016)
地域関係者のための緊急時の対応策の情報ファイルの作成 (上地, 津波 2017)
看護師による 外国人患者の家族への 協力依頼 家族・友人の協力要請 (小林ら, 2014)
妻の通訳で説明などをくりかえす (東ら, 2012)
妻と面談を開始し、情報交換や患者の困っていることや問題などを確認した (東ら, 2012)
患者は引っ越しをしたばかりであり、電話の手続きやテレビの接続ができていなかったため、電話の手続きを息子に依頼し、テレビは訪問看護師が接続した (岡崎, 矢野, 2017)
妻の困っていることにも触れ、解決策を一緒に考え支持し、通訳などの協力に感謝した (東ら, 2012)
妻と看護師の信頼関係が構築され、面談時患者を同席させることにした。いま望んでいることが何かを共有しどうすればよいかを話し合った。妻の通訳を交えてジェスチャーでコミュニケーションをはかり、患者の反応を見た。気持ちが通じると、3人で顔を見合わせて喜んだ (東ら, 2012)
訪問看護師による 精神科看護援助 訪問看護師による 精神科看護援助 顔を覚えてもらうために訪問するスタッフを3名に固定することで徐々に関係性ができつつあり、室内に入ることができた (岡崎, 矢野, 2017)
説明を繰り返しながら室内に入り、生活状況を見ることができたことで、言葉にすることはなかったが、患者が困っていることに気づくことができた (岡崎, 矢野, 2017)
入院中も関係が途切れないように、訪問で固定していた3名の訪問看護師が週に2度は病棟を訪れ面会を行い、入院生活や退院後の話をする機会をもち、継続して支援を行った (岡崎, 矢野, 2017)

表2 在日外国人に対する精神科看護援助の課題

カテゴリー サブカテゴリ― コード 引用元
コミュニケーションギャップによる 関係構築の苦悩 外国人患者とコミュニケーションがとれない ことによって生じる看護師の不安と自責感 言葉が通じなくてしょうがないという気持ち (林ら, 2015)
看護師側のコミュニケーションに対する不安 (小林ら, 2014)
コミュニケーションが通じずにもやもやしました (林ら, 2015)
関係構築ができなことへの申し訳なさ(対象者の国の言葉が話せない)申し訳なく思う (林ら, 2015)
言葉も通じない中で患者がストレスを感じ、病状が悪化するのではないかと無力感を言葉にする看護師が増えていった (東ら, 2012)
コミュニケーションがもっととれれば短い期間で済んだんだと思う (林ら, 2015)
看護師の外国人患者とのコミュニケーション の困難と苦手意識 看護師の言語に対する苦手意識(日本語が通じるかが気になっていることや外国語が苦手と感じる、日本語が通じない患者はとても困るなどの日本語以外の言語に対する苦手意識) (小林ら, 2014)
患者の日本語能力の程度(最初の対応時に外国人患者が日本語をしゃべれるか推測することや相手の日本語の能力の程度、また外国人患者の日本語能力を看護師が意識してしまうこと) (小林ら, 2014)
看護師の対応への苦手意識(ボディランゲージによるコミュニケーションへの不安と非言語的コミュニケーションに関する看護師の苦手意識) (小林ら, 2014)
(服薬の)援助説明をするもなかなか理解されず、行くまでが困りました (林ら, 2015)
患者の理解力、言葉のニュアンスの違い、生活習慣が異なる点などから、会話にズレが生じてしまうこともあった (山田, 2013)
日本人じゃないので言葉の伝え方も難しい (林ら, 2015)
看護師と外国人患者との関係構築の困難 信頼関係の構築困難 (小林ら, 2014)
診察も妻を介し通訳する言葉だけのやりとりで、本人の気持ちや医療者側の意向が直接伝わらない状況が続いた (東ら, 2012)
看護師が外国人患者の病識がないと認識する 治療プログラムにのらない (奥田,吉本, 2009)
病識がない (奥田,吉本, 2009)
否認している (奥田,吉本, 2009)
看護師が外国人患者に対して抱く陰性感情 病気ではなく、犯罪だと思う (奥田,吉本, 2009)
反社会的な生活歴 (奥田,吉本, 2009)
トラブルが多い (奥田,吉本, 2009)
看護師間では積極的にかかわる者と苦手意識をもつ者に分かれた (東ら, 2012)
(叩かれるんじゃないかと思い)やっぱり怖いという思い 混乱してた時の対応が一番困った (林ら, 2015)
怒りや嫌悪感を主とした陰性感情をもったまま患者に接する職員も多く、それが患者との関係に影響を及ぼしていた (野嶋ら, 2015)
外国人のイメージ(先入観) (小林ら, 2014)
言葉の壁を越えるリソースの不足 看護師の英語能力の不足 (看護師が)英会話ができない。 (飯田, 前田, 2018)
看護師の英語力に問題あり、和製英語やカタカナ英語を正しい英語であると認識してまい、患者との会話にズレや誤解が生じる要因となった (山田, 2013)
看護師の語学能力不足(看護師の語学力が育たない、患者との意思疎通は難しいと感じる、相手の考えがわからないのが困る、相手の言葉自体がわからないのが困っているなどの、外国人患者に接する際に看護師が自身の語学能力の不足から対応困難さを自覚していること) (小林ら, 2014)
看護師が通訳の活用困難による 外国人患者への援助の苦慮 学校職員が通訳をおこなっていたため、診察では困ることはなかったが、日常の看護援助の場面では困難があった (長澤,中村,2020)
通訳の活用困難(外国人患者の使用言語が少数言語だったため、通訳の活用が難しく対応が困難) (小林ら, 2014)
コミュニケーションギャップによる 精神症状の判断の困難 看護師が外国人患者の文化と宗教の理解不足 生活習慣や背景がわからない (奥田,吉本, 2009)
看護師の患者の文化への理解不足 (小林ら, 2014)
看護師の文化を問題に感じる意識 (小林ら, 2014)
宗教に関したトラブル (小林ら, 2014)
食文化の違い (小林ら, 2014)
言葉、習慣の違い (奥田,吉本, 2009)
患者の異文化への対応 (小林ら, 2014)
多文化への対応統一困難 (小林ら, 2014)
異文化交流が困難 (小林ら, 2014)
日本人の宗教への先入観 (小林ら, 2014)
外国人患者の言語や宗教の違いにより生じる 看護師の精神症状の判断の困難 「幻聴」などの日本語が通じない (岡崎, 矢野, 2017)
患者は亜昏迷状態が続き、日本語をほとんど話せない事から、状態を把握することが困難であった。 (上地, 津波, 2017)
精神症状のアセスメント困難(外国人患者が表出している言動が精神症状なのか判断が難しく、看護師が患者の言動からの精神状態のアセスメントが困難と感じること) (小林ら, 2014)
宗教と病的体験の判断が困難 (小林ら, 2014)
離脱症状がわからない (奥田, 吉本 2009)
(症状)その辺が話を聞くのが難しかったです (林ら 2015)
片言の日本語による会話であるため、患者の言動が妄想なのか現実なのか判断しづらく、症状を把握する困難さを感じた。 (岡崎, 矢野 2017)
家族と地域関係者が抱く不安と 家族対応の困難 看護師の外国人患者の家族対応の困難 家族への説明(に困難) (小林ら, 2014)
息子家族は遠方に住んでおり、疎遠になっている (岡崎, 矢野, 2017)
外国にいる家族への連絡困難 (小林ら, 2014)
家族・地域関係者が抱く外国人患者の退院後の 緊急時対応についての不安 地域を含めた関係者会議の中で、ヘルパーや家族より退院後の緊急時の対応が不安との意見が聞かれた。また、役場職員より地域の消防署へ外国時の救急搬送について事前に通達することを検討しているという発言があった (上地, 津波, 2017)
法制度の違いによる説明と 理解の困難 看護師が精神保健福祉法に係る制度や 危険物の取扱いの説明の困難 (行動制限の説明の場面で)ジェスチャーで言うしか方法がなくて困った (林ら, 2015)
(隔離を)我慢させるしかなかった (林ら, 2015)
なぜ危険物の取扱いや、使用の制限がされるのか、なぜその状況がいけないのかを患者がその場で納得し得る説明ができなかった (野嶋ら, 2015)
外国人利用者の訪問看護制度の理解不足 初回訪問時は、2名の看護師で訪問すると家に入る事はできたが、ヘルパーと勘違いしており「ヘルパーさんじゃないのですか?いいです帰ってください」と言われ、十分に話すこともできなかった (岡崎, 矢野, 2017)
2回目の訪問時は「何しに来た?もういい」と玄関先で拒否され、説明も聞き入れてもらえず、家にはいることさえできなかった (岡崎, 矢野, 2017)

IV. 考察

1. 研究の動向

研究方法は事例研究が6編と最も多く、またその中で地域における看護援助の事例研究は1編(岡崎, 矢野, 2017)のみであった。日本の精神科医療体制は、精神科病床が多く(OECD, 2021)、その中でも平均在院日数が1年以上の長期入院患者が多いことが課題であり、地域に移行している患者数が相対的に少ない現状である。このような社会的背景から、地域における事例研究が少ないと考える。また、地域での精神保健医療サービスを享受している可能性が低いこと(Straiton et al., 2014)も考えられる。実際に2019年に行われた日本訪問看護事業協会の調査では、訪問看護事業所における外国人利用者の実人数は、1人(66.1%)が最も多く、次に2人(20.9%)が多いことを報告している(清崎, 2020)。また、李ら(2018)は、介護保険を利用する在日外国人の高齢者において、年齢層が高い外国人利用者の日本語によるコミュニケーションが困難であること、また経済的な問題で一部のサービスの利用を制限する可能性があると述べる。つまり、外国人利用者の精神科訪問看護の利用率が低い理由は、外国人利用者の言語的課題や経済的問題が背景にある可能性も考えられる。

2. 患者情報からの分類

1) 主病名、入院形態、在留資格について

文献で得られた患者情報の分類より、患者の主病名は、国際疾病分類(ICD-10)においてF2の統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害が多いことが分かった。事例研究の対象者のほとんどが入院患者であり、入院中の患者でF2の疾病が多いというデータと一致していた(厚生労働省, 2020b)。また、入院形態は、措置入院、医療保護入院と記載されており、在日外国人の非自発的入院率が高いという先行研究と類似していた(花岡, 中西, 2023)。在日外国人の言語的障壁による医療サービスへのアクセスの制限(山口, 2023)、健康保険未加入、経済的困窮などの複合的な問題により、精神科医療機関の未受診が生じ、悪化した精神状態で精神科救急にて対応され、非自発的に入院せざるを得ない現状である可能性が示唆される。また、在留資格は、難民、喪失している、留学生であり、他の論文では記載がなかった。在日外国人は在留資格に対応した活動範囲と就労の可否が定められているため、看護師は患者の在留資格を理解することにより、社会的背景に応じた援助を計画する必要がある。 

2) 医療通訳者の利用について 

患者の日本語能力は、最も高いレベルでも日常会話はできるが看護援助の際にはコミュニケーションに困難(奥田, 吉本, 2009)が生じていた。田端(2018)は、「医療通訳を必要とする日本語が母語でない、もしくは日本語でのコミュニケーションに制限がある患者」を「Limited Japanese Proficiency(LJP)」と定義している。採用された文献の研究対象患者は、全てLJPに該当していたが、通訳者を活用した事例研究は2編のみで、その他の事例研究は、妻、学校の職員が通訳を担っていた。花岡, 中西(2023)の実態調査では、精神科医療機関の外国人患者における通訳導入は194人中33人であり、本研究結果と同様に少ないことが分かった。一般的に通訳者が活用できない理由として、費用負担の問題、医療通訳者の人材不足と希少言語の通訳対応の困難が考えられる。小林ら(2014)は、外国人患者の使用言語が少数言語だったため、通訳の活用が難しく対応が困難であったと報告する。2021年より厚生労働省は、「希少言語に対応した遠隔通訳サービス」を開始しているが、インフォームドコンセントといった高度な医療通訳での対応は未だ難しい(日本エマージェンシーアシスタンス株式会社, 2024)。通訳トレーニングを受けていないアドホック通訳は、精神疾患を持つ患者に重要な影響を及ぼす可能性があるため(Flores, 2005)、精神科医療機関における医療通訳の環境整備は喫緊の課題であることが示唆された。

3. 在日外国人に対する精神科看護援助の現状

【文化と宗教に配慮した援助】として、看護師は、外国人と日本人の対応差が出ないように意識(小林ら, 2014)し、食事の調整(奥田, 吉本, 2009; 小林ら, 2014; 西碕ら, 2016)や患者の信念・価値・宗教などの受容(西碕ら, 2016)等を行っていた。在日外国人の国籍の多様化が進む日本において、看護師は文化と宗教に配慮した援助がより一層に求められている。Campinha-Bacote (1994)は、精神科看護師においても多様な文化的背景を持つ患者に対して文化的能力を養う必要性を主張する。しかし、精神科看護師を対象とした文化的能力を向上させる介入研究は少ないため(Radhamony et al., 2021)、今後は一般化を目指した文化的能力向上の教育プログラムの開発を行う必要がある。

また、【訪問看護師による精神科看護援助】として、先行研究において山口, 松尾 (2024)は、外国人利用者への関係性を上手く築けないこともあると述べるが、岡崎, 矢野(2017)は、訪問看護制度の理解のない利用者に対して、顔を覚えてもらうために訪問するスタッフを3名に固定することで、訪問看護師は外国人利用者との関係性を築いていた。外国人利用者に対する訪問看護のガイドライン(清崎, 2020)はあるが、精神科に特化したものは見当たらないため、まずは外国人利用者へ訪問看護師が行う精神科看護援助の実態調査を行い、そのベストプラクティスを集約したガイドラインの作成とその周知が必要である。

4. 在日外国人に対する精神科看護援助の課題

【コミュニケーションギャップによる関係構築の困難】として、看護師は外国人患者とのコミュニケーションのずれにより、不安や自責の念を抱き、コミュニケーションを取ることに苦手意識を持っていた。精神科の看護師は、コミュニケーションのずれから違和感を持ち、それを患者へ直接伝え関係構築する技術を持つ。しかし、精神科の看護師は、外国人患者に違和感を適切な言葉で伝えられないため、 陰性感情を持ち続けてしまい、結果として関係構築の困難へ繋がったと考える。コミュニケーションギャップによる関係構築の困難は、外国人患者の治療やケアの結果に負の影響を及ぼすため(Pandey et al., 2021)、先述した精神科医療機関の多言語に対応する医療通訳の環境整備が急務である。

また、【言葉の壁を越えるリソースの不足】【コミュニケーションギャップによる精神症状の判断の困難】が課題として抽出された。阿部 (2019)は、精神疾患のある患者は母語能力が低下すること、思考障害のある統合失調症の患者は構文や語順の崩れ、語彙の整合性の不具合や言葉の脱落や新作がみられること、文化と宗教の問題で日本人にとって妄想と映ることが、患者の母国では当然の考え方であったりすると述べる。医療通訳の利用が難しい現状の中で、外国人患者とコミュニケーションを図り精神症状を判断するため、看護師は外国人患者の文化圏における精神疾患の在り方や文化と宗教の知識を学ぶ必要がある。

Ⅴ. 研究の限界

本研究の限界として、データ抽出と分析を研究者1名で行ったため、分析者間の一致度を確認できず、研究者バイアスを完全に排除できなかった可能性がある。今後は複数研究者による独立した分析を導入し、研究結果の信頼性をさらに高める必要がある。

Ⅵ. 結論

文献検討の結果、地域の精神科看護師援助の知見が少ないこと、在日外国人に対する精神科看護援助の現状と課題のそれぞれが明らかになった。公平に在日外国人が精神科医療を享受し看護援助を受けるためには、医療通訳の環境整備、精神科看護師に対する文化的能力向上の教育プログラムの開発、外国人利用者へ訪問看護師が行う精神科看護援助の実態調査とエビデンスに基づいたガイドラインの作成が求められる 。

著者の貢献

半沢亮太:研究デザイン、データ収集、分析、論文草稿作成

謝辞

本論文の執筆にあたり、山下真裕子教授からご指導とご助言を賜りましたことを感謝申し上げます。

利益相反

本研究は開示すべきCOI関係にある企業・組織および団体等はない。

文献
 
© 一般社団法人 日本国際看護学会
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