抄録
腰痛性疾患, 頸肩腕症候群, 肩関節周囲炎に対するTS-110の臨床的有用性を評価するため, ジクロフェナクナトリウムを対照薬として二重盲検法により比較検討した.投与量は1日あたりT群が12mg, D群が75mg, いずれも1日3回毎食後投与とし, 投与期間は2週間とした.解析については「鎮痛消炎剤の臨床評価方法に関するガイドライン (1985.5) 」に則り, 腰痛性疾患, 頸肩腕症候群, 肩関節周囲炎の3疾患全体で行った.
1.総投与例数331例 (T群158例, D群173例) のうち, 解析対象例は, 有効性256例 (T群125例, D群131例) , 安全性302例 (T群144例, D群158例) , 有用性255例 (T群124例, D群131例) であった.
2.最終全般改善度では改善率 (改善, 以上) は, T群, D群それぞれ60.8% (76/125) , 55.7% (73/131) であり, T群の有効性はD群と同等であった.疾患別では, 腰痛性疾患ではそれぞれ68.2% (30/44) , 60.8% (31/51) , 頸肩腕症候群では57.9% (22/38) , 47.6% (20/42) , 肩関節周囲炎では55.8% (24/43) , 57.9% (22/38) であった.
3.概括安全度では安全率 (安全である) が, T群, D群それぞれ77.8% (112/144) , 73.4% (116/158) であり, T群の安全性はD群と同等であった.疾患別では腰痛性疾患でそれぞれ84.3% (43/51) , 73.3% (44/60) , 頸肩腕症候群で70.8% (34/48) , 75.0% (39/52) , 肩関節周囲炎で77.8% (35/45) , 71.7% (33/46) であった.
4.有用度では有用率 (有用, 以上) は, T群, D群それぞれ58.1% (72/124) , 46.6% (61/131) であり, T群の有用性はD群と同等であった.疾患別では腰痛性疾患でそれぞれ68.2% (30/44) , 50.0% (25/50) , 頸肩腕症候群で52.6% (20/38) , 41.9% (18/43) , 肩関節周囲炎で52.4% (22/42) , 47.4% (18/38) であった.
5.副作用はT群では148例中32例 (21.6%) 38件に, D群では164例中46例 (28.0%) 68件に認められ, 症状別では消化器症状がT群で27件, D群で38件, 薬疹がD群で1件, 精神・神経系の症状がT群で2件, D群で10件, その他の副作用がT群で5件, D群で7件, 副作用とした臨床検査値異常がT群で4件, D群で12件に認められた.
以上の結果より, TS-110は腰痛性疾患, 頸肩腕症候群, 肩関節周囲炎に対しジクロフェナクナトリウムと同等の有効性, 安全性を有し, 臨床的に有用性の高い薬剤であると考えられた.