手術後疼痛および外傷後疼痛に対するTS-110の臨床的有用性を客観的に評価するため, ロキソプロフェンナトリウムを対照薬として二重盲検法により比較検討した.
1.患者背景
手術後疼痛においては, 有効性解析対象症例は121例 (T群58例, L群63例) , 安全性解析対象症例は148例 (T群71例, L群77例) , 有用性解析対象症例は121例 (T群58例, L群63例) であり, 外傷後疼痛においては, 有効性解析対象症例は101例 (T群55例, L群46例) , 安全性解析対象症例は115例 (T群61例, L群54例) , 有用性解析対象症例は103例 (T群56例, L群47例) であった.
患者背景において, 両群間に手術後疼痛では, 「性別」, 「体重」, 「既往症の有無」, 「合併症の有無」, 「麻酔法」, 「感染の有無」, 観察項目の初期値の「局所熱感」, 外傷後疼痛では「受傷から来院までの時間」以外偏り (p<0.15) のあった項目は認められなかった.なお, これらの偏りの主要評価項目に及ぼす影響をMantel-Haenszel法により検討したが, 影響は認められなかった.
2.主要評価項目
1) 最終全般改善度
改善率 (改善, 以上) は, 手術後疼痛ではT群87.9% (51/58) , L群85.7% (54/63) , 外傷後疼痛ではT群76.4% (42/55) , L群76.1% (35/46) であり, いずれも両群間に有意差は認められなかった.
2) 概括安全度
「安全である」は, 手術後疼痛ではT群88.7% (63/71) , L群89.6% (69/77) , 外傷後疼痛ではT群86.9% (53/61) , L群92.6% (50/54) であり, いずれも両群間に有意差は認められなかった.
3) 有用度
有用率 (有用, 以上) は, 手術後疼痛ではT群86.2% (50/58) , L群82.5% (52/63) , 外傷後疼痛ではT群67.9% (38/56) , L群72.3% (34/47) であり, いずれも両群間に有意差は認められなかった.
3.副次評価項目
1) 初回投与後の効果発現時間
初回投与後の効果発現時間は, T群, D群それぞれ, 手術後疼痛においては15分以内12.1% (7/58) , 17.5% (11/63) , 30分以内34.5% (20/58) , 60.3% (38/63) , 45分以内56.9% (33/58) , 76.2% (48/63) , 1時間以内89.7% (52/58) , 87.3% (55/63) であり外傷後疼痛においては, それぞれ15分以内7.3% (4/55) , 6.5% (3/46) , 30分以内23.6% (13/55) , 39.1% (18/46) , 45分以内34.5% (19/55) , 45.7% (21/46) , 1時間以内69.1% (38/55) , 65.2% (30/46) であった.
2) 初回投与後の効果持続時間
初回薬剤服薬後の鎮痛効果持続時間は, 手術後疼痛・外傷後疼痛いずれにおいても両群ともほぼ同様の分布であった.
3) 臨床症状の推移
開始時と最終評価日の臨床症状の推移は, いずれの項目も両群ともほぼ同様の推移であった.
4) 症状改善度 (患者の自己評価)
試験薬剤の効果に関する1日後, 2日後および3日後の患者の自己評価は, 手術後疼痛では, 1日後の「良くなった」以上でT群80.7% (46/57) , L群59.7% (37/62) であり, T群がL群に比し有意 (p<0.05) に高かった.外傷後疼痛では, 両群ともいずれの時期においても同様の値であった.
5) 症状改善度 (医師の評価)
1日後, 2日後および3日後に評価した各臨床症状の改善度は, 手術後疼痛, 外傷後疼痛いずれにおいても両群のいずれの時期においても同様の値であった.
6) 副作用
手術後疼痛の副作用はT群に11.3% (8/71) , L群に10.4% (8/77) 認められ, 内訳はT群では腹部不快感3件, 腹痛, 悪心, 眠気各1件およびGOTの上昇1件, GPTの上昇2件, またL群では眠気2件, 腹部不快感, 下痢, 掻痒感, 耳閉感各1件およびGOTの上昇1件, GPTの上昇2件であった.外傷後疼痛の副作用はT群に13.1% (8/61) , L群に7.4% (4/54) 認められ, 内訳はT群では腹痛3件, 腹部不快感, 悪心, 下痢, 発疹, ふらふら感, 肝機能異常, 動悸各1件, またL群では眠気, 肝機能障害各1件およびGOTの上昇1件, GPTの上昇2件であった.
4.ITT解析
手術後疼痛・外傷後疼痛いずれにおいてもPC解析とほぼ同様の結果であった.
以上のことから, TS-110は手術後疼痛, 外傷後疼痛に対し効果の発現時間は短く, 持続性もあり臨床的に有用な薬剤と判断した.
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