抄録
損害保険業態の最適資本構成は如何にあるべきか。資本に関わる利害関係者は,株主,経営陣,従業員,保険契約者,規制当局,格付機関等があり,それぞれその捉え方が異なる。
本稿では株主価値指標であるEVAが「0(ゼロ)」になるROE から逆説的に最低必要資本を算出する。最低必要資本の分析により,損害保険業態が保険本来の企業価値を創造しているかどうかを考察する。
損害保険業態は,商品特性(価値転倒財,不確実性の財など),事業特性(より大きい母集団確保の必要性など),および市場特性(独占的競争市場など)が特異であるため,株主価値増大に向けた過度の目標設定は,損害保険経営の安定という観点からは必ずしも賢明な方向性であるとは言い難い。基本はあくまで負債の管理・運用であり,アンダーライティングを中心とするリスクテイクと資本の充実度の関係を管理し,経営の健全性を確保しながら資本効率を高めることにある。