抄録
現在,保険契約法の「現代化」へ向けた検討が進行している。今回,相互保険のみならず共済も統一的規律の対象とすべきとの整理に関連し,保険契約法の私法体系に占める位置付け論が活性化する余地があろう。本稿では,従来の議論経緯や新会社法の単行法化の中での会社からの営利性要件の削除といった動向も踏まえ,相互保険の商行為性,相互会社の実質的営利性といった観点を中心に考察を行う。立法論としては相互保険,共済も含め少なくとも実質的には営業的商行為として規律することが妥当であり,これらの統一的規律の必要性のみを背景とする単行法化論は妥当ではない。保険は商法の実質的意義を「企業関係」と「商的色彩」の何れに求めようが,実質的な商法の典型例として規律することが適当であり,さらに形式的意義における商法典の空洞化を回避する観点からは形式的にも商法典中に存置する方向性,すなわち単行法化はこれを行わない事が望まれる。