保険学雑誌
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保険学雑誌第600号記念論文
保険契約法と共済について
―保険法部会「中間試案」における保険契約法の「適用範囲」を中心に―
押尾 直志
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2008 年 2008 巻 600 号 p. 600_209-600_226

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抄録

保険法部会「中間試案」において提起された最も重要な問題は,保険契約法の「適用範囲」に「共済」を含めることである。商法の「保険」に関する規律を見直す上で,第502条に規定する「営業的商行為」としての性質を曖昧にするだけでなく,「共済」の歴史的,社会的使命・役割および意義を軽視する虞がある。
保険法学による共済規制論は,とくに1970年代以降,市場経済が混迷し国民の生活不安が増大する中で,共済運動が新たな発展段階に移行していくのと軌を一にして展開され,2005年改定の保険業法および保険法部会「中間試案」に色濃く反映されている。
保険法学は保険技術的・法形式的視点から「保険」と「共済」を同一視することによって一元的規制論を主張するのであり,「共済」を性格・特徴づける組織・運営原則を考慮の範囲外に置いている。したがって,保険法部会「中間試案」において示された保険契約法の「適用範囲」に「共済」を含める方針は再検討されなければならないであろう。

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© 2008 日本保険学会
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