抄録
保険募集規律における損害賠償責任の特例について,わが国の保険法改正法には反映されなかった。その背景には,保険法が一般私法の枠組みの中でとらえていくべきであるというものであった。本稿では,保険募集の過程で情報提供義務に違反して締結された顧客のニーズに適合しない保険契約あるいは締結されなかった保険契約における「損害」とは何かを糸口にして,自己責任に基づく契約理論を背景としているドイツの新保険契約法6条の助言義務と保険募集人と保険契約者との間で取り交わされた内容による履行が保険者によって保障されるという判例により発展した保険者の信頼利益の法理との関係に注目した。