抄録
我々は、イネのSnRK2プロテインキナーゼファミリーに分類されるキナーゼの機能解析を進めている。SnRK2ファミリーには、アブシジン酸 (ABA) による発現誘導をうけ、アリューロン層での GA 誘導遺伝子の ABA による発現抑制との関連が示唆されているコムギPKABA1や、孔辺細胞特異的でABAによる活性化を受けるソラマメAAPKなどが含まれる。イネゲノム上には同じサブファミリーに分類されるプロテインキナーゼをコードする遺伝子が少なくとも10個存在する。このうち、コムギPKABA1と最も高い相同性を示す2つの遺伝子についてノーザン解析を行ったところ、ともに高塩、乾燥およびABA処理によって発現誘導されることから、これらのファミリーをSAPK ( Stress and/or ABA regulated Protein Kinase ) と名付けた。今回は、SAPKファミリーメンバー10個 (SAPK1~10)すべてについての活性化制御を解析したので報告する。
SAPK1~10をそれぞれイネ培養細胞Oc株プロトプラスト内で一過的に過剰発現させたところ、すべてのプロテインキナーゼが高浸透圧処理によって速やかに活性化され、さらに、SAPK8, 9, 10についてはABAによる活性化も認められた。以上の結果から SAPKファミリーのプロテインキナーゼはABAおよび高浸透圧ストレスシグナリングカスケードの両方において機能していることが示唆された。