2010 年 2010 巻 610 号 p. 610_133-610_152
ロイズ危機を経て,ロイズは従前のロイズとは似て非なるものとなった。ロイズ危機も,その後の復活と躍進もコーポレートガバナンスと強く関係している。ロイズにおけるガバナンスの歴史は,伝統的な「会員自治」の時代,「規制監督」の時代,および「マネジメント」の時代に区分することができる。ロイズが近年その存在感を高めているのは,ガバナンスの軸足を「規制監督」から「マネジメント」へとシフトしたことによるところが大きい。それは法人メンバーが太宗を占めるようになったこと,FSA の規制下に入ったことなどと軌を一にするものである。その特徴は「株主価値最大化主義」モデルの範疇に属するものであること,「ベストプラクティスが市場のスタンダードとなるよう規律付ける」ものであること,すなわちコーポレートガバナンスを単なる「不祥事の防止」とは捉えていないこと,そして自主規制と公的規制のバランスがとれていることである。