損害保険約款における事故内容の不実申告免責規定は,保険契約者・被保険者に有利に改定されたものの,なお保険法の片面的強行規定との関係で問題を残しているとも評価しうる。
本稿では,自動車保険に関する福岡高裁平成20年1月29日判決を手がかりに,従来の約款規定の問題点は,被保険者の個性を問わず一律に全部免責とする効果が過大であったことと,故意の事故招致を理由とした免責が認められなかった場合のセービング・クローズとしての裁量的運用にあったと分析した。
その上で,約款立法論としては,不実申告者たる被保険者と他の被保険者とを区別して厳格な運用を実現するとすれば,不実申告全部免責を規定することは現行法上も可能であるとした。
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