抄録
1996年に第2次橋本内閣が当時の世界経済情勢を背景として日本版金融ビッグバンを進めた。護送船団行政と称される規制による手厚い保護を受けていた保険業界を含む国内の金融機関が競争環境にさらされることになった。
競争原理が導入されたことにより会社間での商品競争や価格競争などが発生した。消費者が得ることができた利点は少なくない。しかしその一方で,自由化以降,商品の多様化が急速に進みもともとわかりやすいとは言えない保険商品がますますわかりにくくなってしまったことや2005年に表面化した保険金不払い問題を引き起こす一因ともなってしまった。
保険金不払いの原因は商品特性,人材,経営者の3点に集約される。また生命保険業界と損害保険業界においても異なる背景が存在する。
本稿では保険金不払い問題と行政処分事例を考察することにより,保険金不払いの原因ついて考察する。