抄録
1996年の保険業法の改正以降,継続的に保険規制は緩和され,保険行政の質的な転換が進んだ。また,その後の金融システム改革も含めて,業態間の参入障壁は引き下げられ,業務範囲規制も緩和されたことで,保険経営の自由度は高められた。しかし,こうした規制環境の変化にあっても,保険契約者に対するワンストップ・サービスのメリットは生かされていない。また,多角的な競争を通じた,業務の効率化と契約者への利益還元も十分とはいえない。
こうした要因のひとつとして,相互会社組織の問題を取り上げ,規制環境の変化が相互会社の経営行動に及ぼした影響を検証する。そのうえで,エージェンシー理論の枠組みを用いて,経営改革のための制度的仕組みを包括的に論じる。それには,相互会社におけるガバナンス改革,資金調達手段の多様化,そして持株相互会社への移行などが含まれる。