2011 年 2011 巻 613 号 p. 613_169-613_186
有効競争は,市場における規模の経済性の追求を是認し,同時に市場競争によるメリットの享受を目的とした概念であり,市場の規制政策評価(有効競争レビュー)の理論的根拠を提供することで,いまなお用いられる。
わが国の生命保険業においても規制政策評価は必要である。
現在,生命保険会社は規制緩和を端緒とする競争環境に加えて,低調な金融環境へ対応するために金融収益依存型経営からの脱却・転換を図っている。こうした状況で生命保険会社の保険金不払い問題が生じた。
生命保険市場における保険金不払い現象を,情報の格差からもたらされる生命保険会社の機会主義的行動と理解するとき,市場機構を介した効率的な資源配分は阻害され,また保険取引をめぐって,加入者・被保険者の保険料負担とリスク負担の公平性は損なわれる。
望ましい市場成果に向けて,このような生命保険業の現代的問題を解決する必要があるが,規制政策評価としての有効競争の概念は,その一助となる。
市場の効率性の追求と保険取引における公平性の保持が,今後の規制政策評価の内容に求められる。