抄録
東京高判平成21年9月30日は,生命保険契約における無催告失効条項を消費者契約法10条により無効であると判示した。しかし,同判決には,継続保険料の支払いの履行期に関する約款解釈や消費者契約法10条後段要件の判断方法等,疑問を感じざるを得ない点が少なくない。確かに無催告失効条項は,履行の催告や解除の意思表示もなしに保険契約が失効するという点において,民法の解除に関する規定よりも保険契約者の権利を制限しているが,(1)支払期月に保険料が未払いであっても1ヵ月の猶予期間を設定していること,(2)約款外の実務とはいえ事実上義務化されている督促通知の送付を行っていること,(3)自動振替貸付や復活といった代償措置の存在等を考慮すると,信義則に反するほどに保険契約者の利益を一方的に害しているとはいえず,消費者契約法10条に該当するような不当条項であるとはいえない。