保険学雑誌
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2011 巻, 614 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
ARTICLES
  • -保険法との関係を中心にして-
    宮根 宏一
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_1-614_20
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    保険法に多く含まれている片面的強行規定については,それらの趣旨に間接的・実質的に抵触する特約も無効となるものと解されており,そうした趣旨との間接的・実質的な抵触の有無をどのような枠組みで判断すべきかが問題となっている。
    この問題について,民法等における脱法行為論に係る学説・判例の状況等を手がかりとして整理した結果,片面的強行規定の趣旨と特約との抵触の有無に関する判断の法的な性質は,拡張解釈・類推解釈を含む広い意味での片面的強行規定の解釈とその当てはめであって,当該判断の実質的な内容の中核は,片面的強行規定の規制目的と特約の目的のそれぞれの合理性・必要性の大きさに関する評価を中心とした比較衡量であること,等を確認することができた。
  • 林 晋
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_21-614_40
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    リスク認知が保険需要形成プロセスの出発点であると想定されるにもかかわらず,実際の保険需要はかならずしもリスク認知から形成されるとは限らず,論理的,合理的,体系的思考と行動の脆弱性を併せ持つことが指摘されている。また,こうした特徴は,企業保険よりも家計保険において強く観察されると指摘されている。そこで本稿では,家計における生命保険需要形成プロセスの特徴を,伝統的な死亡保障領域におけるリスク認知と保険需要との関係をパス解析で実証的に検証した。
    その結果,生活者のリスク認知〜生命保険需要のプロセスは一元的でなく,次のような特徴があることが明らかになった。
    (1)生命保険需要の出発点がリスク認知に認められる場合でも,リスク保障ニーズを経由するタイプとそれを経由しないタイプの2通りがあり,それぞれに人口学的属性の特徴が異なる。
    (2)リスク認知が生命保険需要にまで至らずにリスク保障ニーズで留まるタイプがある。
  • 宮地 朋果
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_41-614_57
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    保険契約における公平性に関しては,保険数理や統計的なデータのような客観的判断とともに,国民性や価値観などの主観的判断も加わる。本稿は,これらの要素がいかに組み合わさり,公平性という価値判断が生成されるか理論的に考察することを目的とした。危険選択は,保険会社や保険数理の枠組みにおける判断と,一般消費者の認識との乖離が特に顕著となるおそれがある。したがって,保険数理的公平性と社会的公平性もしくは公共性をいかに図るかという視点が必要となる。逆選択の不利な影響を防ぐための危険選択や,適正なリスク細分化が求められるが,社会・経済制度も含む様ざまな環境変化により,その根拠となるべき価値判断の基準も変わる。近年その速度が高まるなか,社会環境の変化に事後的に対応せざるを得ないという保険の限界を鑑み,危険選択をはじめとする保険実務の在り方を,実務・研究の枠組みを超えて,広く検討することが期待される。
  • ―東京高判平成21年9月30日の検討―
    深澤 泰弘
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_59-614_78
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    東京高判平成21年9月30日は,生命保険契約における無催告失効条項を消費者契約法10条により無効であると判示した。しかし,同判決には,継続保険料の支払いの履行期に関する約款解釈や消費者契約法10条後段要件の判断方法等,疑問を感じざるを得ない点が少なくない。確かに無催告失効条項は,履行の催告や解除の意思表示もなしに保険契約が失効するという点において,民法の解除に関する規定よりも保険契約者の権利を制限しているが,(1)支払期月に保険料が未払いであっても1ヵ月の猶予期間を設定していること,(2)約款外の実務とはいえ事実上義務化されている督促通知の送付を行っていること,(3)自動振替貸付や復活といった代償措置の存在等を考慮すると,信義則に反するほどに保険契約者の利益を一方的に害しているとはいえず,消費者契約法10条に該当するような不当条項であるとはいえない。
  • ―無催告失効条項の効力にかかる東京高判平成21年9月30日を素材として―
    中村 信男
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_79-614_98
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    生命保険契約において保険契約者が第2回目以降の分割払い保険料の支払を怠り,約款所定の支払猶予期間内にもなお保険料支払義務を履行しないときは,当該期間の満了時に保険契約が失効する旨の無催告失効条項について,実務上は保険契約者の意図しない契約失効を回避する努力が図られてきたことから,その有効性を肯定するのが判例・多数説であったが,近時,東京高判平成21年9月30日が当該条項を消費者契約法10条所定の不当条項に該当するものとして無効と判示した。そこで,本稿は,この判決を素材にして無催告失効条項とそれに基づく契約失効を認めるための要件につき,この種の問題を明文で規律する外国法制も参照しながら検討を加えた上で,立法論として,現行実務の明文化ともいえる失効予告通知制の導入とともに,通知要件充足に係る保険者の立証負担軽減のための措置として通知到達擬制の定めを併せ法定することの必要性を唱えるものである。
  • ―新しい資本要件の方向性―
    重原 正明
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_99-614_118
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    欧州で準備が進められる新ソルベンシー監督制度(ソルベンシーII)のうち,資本要件については,QIS5という試算の基準の形で基準案が示されている。試算基準では,資本要件の判定は,経済価値ベースの財務諸表の作成,必要資本の計算,資本の質を考慮した自己資本との対応の判定という手順で行われる。また保険会社グループに対しグループ監督者を定め,グループ・ソルベンシーの判定等の監督が行われる予定である。
    ソルベンシーⅡは他の諸国のソルベンシー規制への影響とともに,グループ監督を通じて欧州域外の保険会社にも直接影響を与える可能性がある。従って検討を通じて提示されている「リスク分類」「リスク分散の反映」「自己資本の算入・階層分けの基準」「グループ監督に関する問題」等の各論点の検討動向には今後とも注目すべきと考えられる。
  • 董 普, 久保 英也
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_119-614_137
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    死亡率の推計において,中国など新興保険市場では絶対的に標本数が不足したり,日本でもリスク細分化保険などにおいて既存の標本ではアクチュアリーが想定する死亡率ラインから外れたりする。いわば,ある種の統計上の歪が発生する場合がある。本稿では,歪んだ標本死亡率からより正確に数理計算に使用する死亡率を算定するための1つのスムージング手法を提案する。スムージング手法は,(1)修正後のデータ系列は観測データから大きくは乖離していない「Fit」の状態にあること,(2)先験情報を使うこと,(3)データ系列は円滑な序列である,という3要素を満たしていることが重要である。今回提案したスムージング手法は(1)〜(3)を1つの基本構造式と2つの制約条件に置き換え,その解を数学的に求めようとするものである。日本でも標本数が相対的に少ない乳幼児のゾーンと高齢者ゾーンに適用される第2次補整と第3次補整のチェックなどに応用できると考えている。
  • ―保険契約類型とその適用基準をめぐる一考察―
    桜沢 隆哉
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_139-614_156
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
    新保険法では,大分類として,損害保険契約群と定額保険契約群とに保険契約を分類しているものと考えられる。この分類によれば保険代位の適用基準をどのように解すべきかが問題となる。従来,損害保険・定額保険といった分類標準に物財産保険・人保険といった分類標準も加えて考察し,人保険の性質に着目して,損害保険に強行法的に作用する利得禁止原則も人保険には任意法的に作用するものと解されてきた。こうした議論を踏まえて,新法の下でも,損害保険契約群に分類される保険契約に関しては人保険としての性質に着目し,利得禁止原則が任意法的に作用するものと考え,その帰結である保険代位の適用についても絶対的に肯定されるものではないということの理論的前提を提示している。特に旧商法には規定のなかった傷害疾病保険については諸外国でもあまり例のない類型化がなされており,これに関する影響について具体例をあげて考察している。
  • 保険学雑誌編集委員会
    2011 年 2011 巻 614 号 p. 614_157-614_226
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2013/03/22
    ジャーナル フリー
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