保険学雑誌
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人身傷害保険をめぐる実務上の問題点
-裁判基準差額説のその後-
古笛 恵子
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2012 年 2012 巻 618 号 p. 618_223-618_242

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抄録
平成24年2月20日,最高裁は,人身傷害保険の代位の問題について裁判基準差額説の採用を明らかにした。本判決により代位の問題は一応の決着をみたが,人身傷害保険をめぐっては未だ残された実務上の問題は多く,むしろ訴訟による解決を前提とすることから新たな問題も顕在化している。本稿は誤解も含め現に実務で問題となっている点を紹介したうえ,個別具体的訴訟事案の解決として機能的なアプローチに寄り過ぎた感のある実務における解決の指針を,いま一度,人身傷害保険の本質に立ち返ることをもって探るものである。人身傷害保険は傷害損害保険であると解する。責任保険を補完する機能があるからといって責任保険そのものでも責任保険の裏返しでもない。あくまでも人保険である傷害保険の本質を有する損害保険である。そこで填補される損害は,有責加害者に対して請求しうる損害と重複するものの同じではない。あくまでも傷害による損害である。
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© 2012 日本保険学会
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