抄録
巨大リスクは国民経済を脅かす存在として,個人や企業にとって大きな関心となっている。近年,多大な経済的損害をもたらす自然災害が多発する中で,保険損害も著しい増加傾向を示している。巨大リスクは,保険可能性において困難なリスクではあるが,保険可能性は,絶対的基準ではなく相対的基準である。保険技術や保険会社の資本増強により,保険キャパシティは格段に向上している。巨大リスクへの対処策の保険の機能を最大限に引き出すためには,補償と抑止の相互性を踏まえた損害緩和の対策が重要である。さらに,巨大災害コストを社会全体として引き下げるために,リスクマネジメントの観点から,それぞれの次元で,官民役割分担のあり方を考慮に入れる必要がある。