抄録
地震保険を,社会連帯に基礎を置いた,市場による交換とは異なる,統治団体が関与して給付を行う制度として構想する,すなわち社会保険として構想することが考えられる。地震保険の基礎としての社会連帯は顕在化していないが,社会連帯の素地はあり,統治団体の主導で社会連帯を形成していくという位置づけは可能であろう。ただし,その場合でも,具体的内容については様々な要素を考慮することが必要であり,一義的に内容が決まるものではない。たとえば,保険料率の細分化については,社会連帯の見地からは,保険料率細分化を徹底しないことが望ましいとはいえる。ただし,低リスク者から高リスク者への所得再分配が大きくなりすぎると社会連帯の基盤を害するおそれもあるため,どの程度の再分配が妥当かはさらに問題となる。