保険学雑誌
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欧州連合における新しい保険監督法制
佐藤 雅俊
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2013 年 2013 巻 621 号 p. 621_153-621_172

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抄録

欧州連合には,それが国家の連合体であるがゆえの利害衝突調整メカニズムの定立や保険監督基準の実務上の統一化がなされずにきた経緯がある。その意味で,先般の欧州連合における保険監督機関の創設(後述するEIOPA)は,加盟国間に内在する保険監督上の諸問題を解決しようとする動きを具体化したものに他ならない。本稿における検討から得られた結論は,以下のとおりである。
すなわち,欧州連合では,域内保険市場における「自由化」にともなってさまざまな競争状態とその弊害が生じた。よって,事後監督規制がより重要となったので,これをより強化するため,保険監督統合指令としてソルベンシーII指令の制定が求められた。
そして,EIOPA は各加盟国の保険監督機関に対し,保険監督統合指令の遵守と,実務におけるソルベンシー等の数値基準を確保させるよう促す義務があり,これに呼応する形で各加盟国の監督官庁に課せられる業務は格段に増えると同時に,その地位の相対的低下が生じるものと予測される。

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© 2013 日本保険学会
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