保険学雑誌
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医学の進歩と保険約款
佐々木 光信
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2013 年 2013 巻 621 号 p. 621_31-621_48

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抄録
終身タイプの第三分野商品が普及しているが,超長期の保険期間中に医療環境は大きく変化する。契約時点では想定していなかった医学の進歩は,商品のリスクに大きく影響するのみならず,そもそも約款と医療の乖離という問題を提起する。保険期間中の医療環境の変化は,保険契約としての契約時主義と保険事故の発生時主義の対立構造をもたらし,消費者の苦情にも繁がっている。また保険事故の要件には,医学的な記述が不可欠で,約款が分かりづらいという消費者の批判を増幅させ,約款の運用をより複雑にしている。約款の医学的解釈には,時間と共に変化する異時性の差異と医学的記述に対する読み手の理解の差による同時性の差異が,輻輳することになる。本稿では,今後想定される医学の進歩を見つめつつ,約款への影響を分析することにより約款の在り方,言い換えると約款の医学的骨格の強化について論じる。
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© 2013 日本保険学会
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