抄録
生命保険契約者の変更とは,保険契約者が有する保険契約上の一切の権利義務を第三者に承継させることで,保険法はこれに関する規定を定めておらず,生命保険約款では,保険契約者は被保険者および会社の同意を得て,保険契約上の一切の権利義務を第三者に承継させることができると定めている。従って,生命保険契約者の変更は保険会社が同意する一定の事情がある場合のみ可能な状況であり,非常に制限的なものとなっている。
時代の変化,特に高齢化社会の側面で鑑みると,従来の生命保険契約の目的である遺族保障は現在の消費者ニーズに応えられていないので,保険契約者の重要財産の一つである生命保険契約を流動化する合理的な方案を模索する必要があるだろう。そこで,本稿は生命保険契約者の変更をめぐる法的問題について,日本と同様の状況である韓国の議論を中心としてその実例と提案などを紹介し,日本での議論と比較している。
生命保険契約が有する財産的価値の活用方法の中には,確かに様々な問題が生じうるものもあるが, その具体的な問題については立法・制度的側面から事前・事後的な対策を備えた上,合理的な手段として活用できるようにその機会を与えるべきであると思われる。