保険学雑誌
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金融機関の新たな破綻処理制度と保険会社の課題
松澤 登
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2014 年 2014 巻 626 号 p. 626_51-626_69

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抄録

預金保険法が2013年に改正され,「金融機関の秩序ある処理の枠組み」が導入された。この枠組みは,経営危機に陥ったシステム上重要な金融機関に対し,市場型システミックリスクを有する取引を継続させつつ,株主や債権者の負担で損失を処理する(ベイルイン)という措置を定めたものであり,保険会社も制度の対象にされている。しかし,保険会社が引き受けるリスクは相互に連動しないため保険事業はシステム上重要とは考えにくく,この枠組みが適用される可能性は高くない。仮に適用される場合にも,典型的にシステミックリスクを有するデリバティブ取引を特定承継金融取引業者に承継させられる制度になってないこと,保険契約者保護機構が管財人となることが利益相反となりかねないこと及び衡平資金援助により保険契約が全額保証されベイルインとはならない懸念があることといった課題があり,創造的対応が必要となる。

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© 2014 日本保険学会
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