保険学雑誌
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わが国における農業収入保険をめぐる状況
-アメリカの収入保険AGRを手がかりとして-
吉井 邦恒
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2014 年 2014 巻 627 号 p. 627_107-627_127

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抄録

2014年度から,わが国においても農業収入保険の導入に向けての調査・検討が開始されたが,現在のところ,その仕組みについては,「農業経営全体に着目し価格低下を含めた収入減少を補てんする制度」という情報しか提示されていない。本稿では,アメリカのAGR(Adjusted Gross Revenue)と同様の仕組みを前提として経営単位収入保険を実施する場合の留意点等を整理した。新たな収入保険には,金額ベースで収入を把握することにより,収穫量や平均市場価格では十分に評価されない高品質・高価格の農産物に対して,充実した収入保証を比較的安い保険料で提供できるというメリットがあると考えられる。一方,制度設計に当たっては,圃場に収穫物がない状況で保険対象リスクによる農業収入の減少額を青色申告書とその裏付け書類によって確認しなければならないため,損害評価の事務負担が大きくなること,意欲ある担い手が大幅な規模拡大や経営転換を図る場合の基準収入額の設定方法に工夫が必要であること等の課題について対応する必要がある。

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© 2014 日本保険学会
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