2015 年 2015 巻 628 号 p. 628_117-628_137
欧州における地中海・バルト海・北海を結ぶ海運交通では,14世紀後半から既に海上保険制度が普及し,海上リスク対策の一手段として海運関係者に広く利用されていた。
1498年ポルトガルはインド航路を開設し,同国の基幹航路となった。本稿はポルトガルと日本の交易に関して,隣国スペインのブルゴスに残る当時の契約史料と同航路の海難事故事例を分析し,この航路における海上保険の活用状況に関し一次史料と先行研究の二次資料とを使って検証したものである。
その結果,「『大数の法則』に見合う引受件数の確保」と「一定水準で安定した損害率」という要件が十分にカバーされなかったため,ポルトガルはインド航路では海上保険は積極的に利用していなかった,という結論を得た。