日本で起きたバブルとその清算過程において生命保険会社7社が連続して経営破綻した。この経営破綻に至るプロセスや要因については,多くの研究があるものの,複数の要因が存在する。主として定性的な判断によりその主因は,高い予定利率の設定,一時払い保険の大量販売,そして解約の急増とされることが多い。ただ,各要素のインパクトの大きさは明確ではなく,やや思い込みの部分やALM運用などの有無により結果が異なる状況が存在する。
そこで,本稿では,バブル醸成からバブル崩壊までの金利の動きを想定できる理論モデルを作成することにより,高予定利率の保険や一時払いの保険が経営破綻に与える影響等を検証する。
まず,景気循環を想定した一般的な経済局面では,負債に合わせた債券運用と毎年配当の留保(最終配当方式の採用)を行えば,年払いの養老保険と比較して一時払いの養老保険のリスクはさほど高くない。また,低位の金利局面から金利のピーク,そして,金利の急速な低下と長期の低金利局面というバブル期とその後の清算局面では,「大量」の一時払いの販売がバブル期には大きな損失を誘発するものの,経営破綻が表面化するバブル清算期では逆に収益を安定させる方に働くことが判明した。
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