保険学雑誌
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「保険業規制と国際的調和」―平成26年度大会共通論題―
保険業規制の国際協調のあり方に関する考察
-保険のリスク移転と金融仲介機能に焦点をあてて-
諏澤 吉彦
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2015 年 2015 巻 629 号 p. 629_47-629_63

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抄録

本稿は,保険事業が国際化するなか,そのリスク移転と金融仲介機能が確保され,持続的国際経済・社会に資するために必要な保険業規制の国際協調のあり方を探ることを目的とする。従来の保険規制は,保険企業の支払能力,保険料率・商品内容,被保険エクスポージャのリスク実態に関する情報の不完全性を緩和するために個々の市場で行われてきた。しかし保険企業によるリスク移転取引が国際化しつつある現状からは,支払能力に関する情報不完全性は一層深刻となり,保険の諸機能を損ないかねない。このため,ソルベンシー規制,セーフティネット,会計基準,破綻処理規制などの健全性規制に関しては,一定の共通化が必要であろう。一方で,保険料率・商品規制および販売規制などの市場行動規制について,個々の市場の歴史的・社会的背景や経済成長段階の違いを軽視した共通化は,かえって保険のリスク移転機能を損ないかねず,一定の個別性は許容されるべきである。

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© 2015 日本保険学会
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