抄録
企業がその従業員に提供するリタイア後の老後所得保障を企図した退職給付制度及びその代表制度たる企業年金は,転換期を迎えている。
近年,個人別勘定ベースの企業年金(キャッシュバランスプラン,確定拠出年金)の広まりが確認できる。資産積立を通じての「貯蓄」としての性格が強い当該制度を実施する意義として,年金資産の外部積立(退職給付制度におけるリスク分散),企業年金組成によるスケールメリットを通じた制度運営コストの低廉化,加入者(従業員)への教育機会の提供と金融市場の変動性が高まるなかでのオプション性を内包する確定給付型の企業年金としての価値の高まり,が挙げられる。
他方,今後の課題として,年金の給付設計における有期化がもたらす長寿リスクの加入者への転嫁,困難性を増す年金資産運用,制度に対する加入者の理解・関心の底上げ,を指摘したい。