抄録
近年,遺伝子検査の普及が日本においても急速に進んできたため,遺伝子検査と保険をめぐる諸課題が理論の枠を越えて,保険実務に影響を与える可能性が現実的になっている。遺伝子検査結果の利用は現在,日本のアンダーライティングの対象外であるが,英国のように限定的ではあるが導入している事例も挙げられる。保険実務においては,社会保障制度,法制度や国民の意識など,各国独自の要因による影響を無視することができないため,他国の事例をそのまま日本のアンダーライティングに導入することは適正でないが,遺伝子検査の扱いをはじめとするアンダーライティングに関する各国の情報を収集し,様ざまな立場からの積極的かつ具体的な議論が日本国内でも早期に展開されることが望ましい。また近年,医療の発展など,保険を取り巻く環境変化の速度が高まっているため,保険事業者がそれらに迅速かつ適正に対応することが従前以上に求められる。