保険学雑誌
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〔法学系〕
人身傷害死亡保険金の帰趨
-保険法における人身傷害条項の立ち位置-
大塚 英明
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2015 年 2015 巻 630 号 p. 630_271-630_289

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抄録

最近,人身傷害条項の被保険者死亡時の保険金が相続財産には帰属せず,法定相続人が固有にその請求権を取得すると解した下級審判決が登場した。人傷の性質を保険法の定める「傷害疾病損害保険契約」と見る立場は,当然のことながらこの判決を批判する。この立場をとる理論的なメリットは,保険法の認めた典型契約類型として,人傷に確固たる存立基盤を提供できることにある。この点を強く意識し,保険法の契約分類の明確化により,その施行前であれば判決のような見方が許されたとしても,同法施行後は,判決の結論をとると人傷が法の予定するいずれの契約類型からもはじき出されてしまうと指摘する見解さえある。果たして人傷死亡保険金を固有権と解する場合,人傷は保険法下でその存立基盤さえ失ってしまうのであろうか。本稿はこの疑問から,保険法の契約区分の構造論に遡って人傷の法的位置づけについて考察した。そして,たとえ死亡保険金を固有権と解しても,人傷が「(傷害疾病)定額保険」として存立し得るという結論を導くものである。

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© 2015 日本保険学会
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