保険学雑誌
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モンゴルの公的年金制度の将来財政収支の推計と改善に向けた対応
ボロル ソフタ バトボルド
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2016 年 2016 巻 632 号 p. 632_169-632_184

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抄録
モンゴル国(以下,モンゴルと略す)の公的年金制度は,13世紀の大モンゴル帝国時代の高齢者助け合い制度を原点に,王政,社会主義政権,民主主義政権と移行が進む中でも制度変更がなされ,1999年に概念的確定拠出年金を軸とした公的年金制度が誕生するなど興味深い。ただ,日本以上に長い歴史を有する年金制度ではあるものの,今後急速に進む高齢化への対応遅れや人口の3割を占める遊牧民の無年金など課題も多い。そこで本稿では,モンゴルの公的年金制度を歴史的に鳥瞰すると共に今後の年金財政健全化に向けた課題を財政シミュレーションにより明確する。
その結果,可能な限り早い時期に年金保険料を現在の14%から4ポイント引き上げ,また,給付額を現在の45%から5ポイント引き下げる改革が必要になることが判明した。同時に優遇されている早期退職年金給付制度を改め,現在の女性の年金支給年齢を55歳から60歳へ引き上げる(男性は既に60歳)政策を併用し,保険料の引き上げ,給付の引き下げ摩擦を抑えることが重要である。
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© 2016 日本保険学会
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