保険学雑誌
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「グローバリゼーションと保険業」―創立75周年記念大会シンポジウム―
国際保険監督規制の現状と課題
木下 孝治
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2016 年 2016 巻 632 号 p. 632_65-632_79

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抄録
世界的な金融危機を招いた反省から,グローバルに活動する金融機関に対する監督法制の見直しが各セクターにおいて進められているところ,保険セクターにおいても,国際的に活動する保険グループ(IAIG)を監督するための国際標準となる規制枠組の方向性が明らかにされ,ルールの具体化に向けた作業が進められている。保険グループ監督のための共通枠組(ComFrame)では,IAIGの定義が示され,そこで課される保険資本基準(ICS)のあり方についても,具体的な計算方法の考え方が示されている。グローバルシステム上重要な保険グループ(G-SII)に対する追加の資本規制は,基礎資本要件(BCR)と,より高度の損失吸収力(HLA)規制が,全体に係る保険資本規制よりも先に形となった。今般の規制では,保険リスクの評価に加えて非保険業務のリスク評価手法の開発が進められており,保険業規制全体の質を高める効果も期待される。保険契約者保護を超えた金融システム保護のための監督法制は,従来の監督法の枠を超えるものであるので,その考え方をよく咀嚼して,保険業法改正に備えることが望ましい。
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© 2016 日本保険学会
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