保険学雑誌
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生命保険加入に対する販売チャネルの影響
-募集規制の意義と課題-
小山 浩一
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2016 年 2016 巻 635 号 p. 635_141-635_161

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抄録

本稿は,生命保険の加入を加入者要因と販売チャネル影響要因の二つの要素から実証的に考察した。考察の結果,生命保険加入に対する販売チャネルの影響は,加入目的では貯蓄目的とその対極にある医療保障目的(貯蓄と負の相関)の中間に位置する範囲で確認された。営業職員チャネルが老後保障,介護保障,死亡保障において,金融機関チャネルが相続対策において生命保険加入に影響を与えている。
他方,加入者側を見ると,加入者の「保険知識あり」が加入に正の影響を与えるのは貯蓄目的と老後保障である。相関係数からみると老後保障目的の生命保険は貯蓄の手段の一つとして位置づけられている可能性がある。加入者の想定する保険知識は,主に貯蓄としての生命保険に関する範囲と考えられ,貯蓄との相関係数が正かつ低下する範囲で販売チャネルが影響を与えている。販売チャネルの影響は加入者に対する補完的な役割を担っており,全体的にみれば生命保険に関わる社会的厚生に資している。他方,販売チャネルによる生命保険加入への影響は,加入者の当初意向と最終意向の間の変化に販売チャネルが関わっていると理解できる。顧客の意向把握・確認義務及びその事後検証の意義が確認できる分析結果となった。

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© 2016 日本保険学会
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