2017 年 2017 巻 636 号 p. 636_143-636_166
日本には多種多様な共済が存在し,社会に広く,深く根づいている。本稿では共済一般についての概念化を試みる。研究方法として,ペストフのトライアングル・モデルを生活保障システムに適用する。サード・セクターに位置する共済は,主に「私的」,「非営利(相互性)」および「公式」(民主制)により特徴づけられるが,公的な領域に存在するものもある。共済の名称の有無で判断するのは適当でない。さらに,保障サービスを提供する経済組織としての共同体,市場および国家(政府)の相互依存関係の重要性に着目し,今後の環境変化に対する中間組織または社会的経済としての共済の存在意義について検討した。最後に,共済一般の概念化において保険理論および経済理論を適用することで,学際的な保険論の構築可能性を示唆した。