保険学雑誌
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「保険法の国際比較」―平成28年度大会共通論題―
アメリカ法における保険証券解釈ルールの動向
-責任保険法リステイトメント制定企画を契機として-
梅津 昭彦
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2017 年 2017 巻 637 号 p. 637_5-637_29

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抄録

アメリカ保険法において,保険証券の解釈は伝統的な契約解釈ルール一般の適用を出発点として,保険証券自体の,または保険取引の特質に対応してこれまで特徴的な解釈ルール・原則が判例法において展開してきている。その1つが「合理的期待法理」の適用問題であり,それはこれまで様々な角度から検討の対象となってきている。それによれば,現在,同法理の適用に対しては,一面で保険契約の締結過程や一方当事者がいわゆる消費者である場合について好意的に受け入れられているが,他方で,その適用にかかる要件等の不確実性を指摘し否定的な評価も見られる。そのような中で,責任保険をその対象としてリステイトメントを制定する作業が開始されていることは注目に値する。当該リステイトメントは,これまでの保険証券の解釈ルールの再確認であるとも考えられるが,特に,合理的期待法理を直接に条文化している部分はない。その意味では,アメリカ保険法における同法理の評価を表しているものである。
現在,リステイトメント制定作業は終盤にさしかかっており,リステイトメントの裁判所判断に与える影響と実務に与える影響を考えると,本稿のような作業はアメリカ保険法の研究にとって意義がある。を含め,自らの意向に沿った保険への加入という本来有すべき権利を享受することになる。

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© 2017 日本保険学会
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