保険学雑誌
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【保険自由化20年特集】
保険自由化20年と損保業界活動の変遷
-その本質と課題-
竹井 直樹
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2017 年 2017 巻 639 号 p. 639_151-639_175

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抄録

保険自由化から20年あまりを経過したところで「日本損害保険協会百年史」が刊行された。この編纂に携わった者として自分なりにこの20年あまりを振り返る。
保険自由化から10年で保険金不払い問題が発生しその善後策処理で5年ほどを費やした。今振り返るとその前の10年と後の10年では業界活動に大きな変化があった。換言すれば,保険自由化による各社各様の競争を前提にしたやや限定的な業界活動から,損保協会が主体となった自由化時代の協調を前提にした業界活動に変革した。特に,保険募集人教育,苦情・紛争対応,消費者啓発活動,そして共通化・標準化の推進は,監督行政の変化もあって進化していった。
しかし,こうした変化は本質的な部分で生じたのであろうか。保険募集人教育をあらためて損保協会が担うようになったこと,あるいは最近,金融庁が掲げる「顧客本位の業務運営に関する原則」を踏まえると,損保業界は日々の競争に翻弄されて,業界が抱える根本課題についての本質的な論議を置き去りにしてきたのではないか。そうであるとすれば,もう一度損害保険ビジネスの基軸を見据えて今日の技術革新が著しい環境下において業界として英知を集めてやらなければならないことは何かを真剣に議論すべきである。

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© 2017 日本保険学会
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