抄録
本研究は,国民年金の未納率に影響する諸要因を計量的に計測することにより,未納率改善のための政策を再考することを目的とする。
まず,先行研究で主な未納要因とされた「所得(年収)」,「雇用形態(正職員,非正規雇用者)」に加え,「保険料支払いの利便性(分割払)」や「遺産相続を考慮した居住条件(両親との同居の有無)」,「年金の理解度(年金教育)」の5要素についてコンジョイント分析によりその影響度を計量化する。
次に漠然と語られてきた「年金不信感」が支払い意欲に与える影響を計量評価すると共に,上記の未納惹起要因について「学生」と「社会人」に分けその影響度の差異分析を行った。
その結果,①所得(年収)要素が未納率に対し最も影響が大きく,次に非正規雇用などの雇用形態が大きい。また,年金不信感はこの雇用形態の変化(非正規化)の8割程度の影響度で支払い意欲を大きく押し下げている。
②年金への理解を高める「年金教育」や「保険料支払いの利便性(分割払い)」も有効な政策であり,学生と社会人の間の影響度格差を勘案しつつ政策を組み立てることが重要である。