保険学雑誌
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自動車保険の免責条項における「使用者」「使用人」の意義
—大阪高判平成29年9月7日を題材に—
谷内田 誠
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2020 年 2020 巻 650 号 p. 650_41-650_63

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抄録

自動車保険では「使用者」「使用人」の用語が用いられている箇所が複数みられる。支払条項の中では,賠償責任保険における被保険者の範囲を画する規定に「使用者」の文言があり,免責規定では,対人賠償責任条項中に同僚災害免責条項・従業員災害免責条項が定められ,人身傷害補償条項・無保険者傷害条項でも従業員が被害者となる場合の免責条項が定められている。これらの「使用者」「使用人」の意義については,従来から必ずしも統一的な解釈がなされてきたわけではなく,判例・学説も多岐にわたっている。

そのような中,大阪高判平成29年9月7日公刊物未登載(平成29年(ネ)第673号)は,人身傷害補償条項及び無保険車傷害条項における「使用者」の意義について「民法一般における『使用者』,すなわち,被用者との間に実質的な指揮監督関係(使用関係)を有するものをいうと解する」と判示した。これは,同僚災害免責規定や従業員災害免責規定において「使用者」の文言を雇用契約ある場合に限定する通説的な取扱いとは異なる判断である。

そこで,「使用者」「使用人」の文言の意義,個々の免責条項の趣旨,免責条項拡大解釈禁止の原則等を検討し,統一的解釈の適否や現行規定のあり方について論じた。

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