保険学雑誌
Online ISSN : 2185-5064
Print ISSN : 0387-2939
ISSN-L : 0387-2939
【最新海外保険事情】特集
フランス債務法改正と保険契約の射倖契約性
松田 真治
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 2020 巻 651 号 p. 651_111-651_137

詳細
抄録

保険契約は射倖契約か。この問いは,フランス民法典旧1964条が射倖契約のリストの中に保険契約を入れていたことから,そもそも問いですらないほどに自明ともいえた。しかし,中には保険契約の射倖契約性に疑問を呈する研究者がいたのも事実である。このような中で,2016年の債務法改正において,上記条文が削除され,射倖契約の定義規定である,旧1104条も修正されるに至った(新1108条)。この改正は,保険契約の射倖契約性に関する議論にどのようなインパクトを与えるか。改正前における射倖契約の定義規定問題(旧1104条と旧1964条の関係)は,定義規定が1108条2項に一元化されたため解消されたといえる。しかし,1108条においては,保険契約が実定契約と射倖契約のどちらにも属するという解釈が可能となり,保険契約の射倖契約性の問題は,終結したとは言い難い。また,保険契約の性質決定問題について,旧1964条を参照していた破毀院判決が今後どのような理由付けでこの問題を扱うのかは注目されよう。

著者関連情報
© 2020 日本保険学会
前の記事 次の記事
feedback
Top