2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_193-652_214
本稿の目的は,生命保険の制度としての継続性について,「助け合い」や「相互扶助」と,技術的相互性の観点から,「純粋贈与」と,「技術性」や「システムとしての官僚制」の視点を加味し,考察を行うことである。本稿では,保険業界が肯定し,日本保険学会では肯定色が薄い「助け合い」について,その意識が濃いフラターナル保険組合の衰退と,それが希薄な保険相互会社の制度的継続性から,技術的相互性を支える技術性に加え,記号的な「助け合い」の活用について指摘する。その一方,純粋贈与としての生保加入に加え,技術的相互性を運営するシステムとしての官僚制の存在によって,「助け合い」は単純な記号ではなく,理念的な面と制度的・技術的な面からハイブリッド的に形成されたことを指摘する。相互扶助に関する議論が曖昧なまま,制度的に生命保険は存続してきたが,本稿の議論から,生命保険制度と生保経営への理解の再整備が期待される。