保険学雑誌
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後期高齢者の医療費窓口負担の応能性強化について
—一定所得以上を2割負担に引き上げる改正案の定量評価—
河本 淳孝
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2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_169-652_191

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抄録

全世代型社会保障検討会議(議長:安倍晋三)は,2020年6月に2度目の中間報告を行った。医療分野については,応能負担を強化する方向性とその具体策として一定所得以上の後期高齢者の医療費窓口負担を2割に引き上げる制度改正案等が打ち出された。本稿は,当該改正案を実施した場合の影響(政策効果)を定量的に評価した。その結果,改正案を実施した場合の量的な影響は一定所得を幾らにするかに関わらず限定的であり追加の抜本的な制度改革が待たれること,また改正案の一定所得を幾らにするかの検討にあたっては政策目的(厚生改善,公平性配慮,所得再分配等)の組み合わせや優先順位について定量的な評価に基づく検討を行いその結果を国民に広く共有する必要のあること等を確認した。新型感染症対応の混乱の中で検討が行われる制度改正の参考となれば幸いである。

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