2021 年 2021 巻 652 号 p. 652_215-652_242
本稿では,法人保険契約の故意免責と重複契約による重大事由解除を検討した。前者については,最判平成14年10月3日が示した2つのメルクマールの当てはめにつき,先行評釈の存在しない2裁判例をもとに検討した。また,損害保険の裁判例をもとに,取締役の経済的受益可能性の具体例も考察した。後者については,傷害疾病定額保険の個人契約をもとに,著しい重複契約の信頼関係破壊事由としては,支払保険料が著しく高額で契約者が債務を履行できないことや,短期集中加入の程度が著しいことがわかりやすいと考察した。その上で法人生命保険契約の重複契約による重大事由解除が問題となった裁判例をもとに,保険契約者・被保険者・保険金受取人と保険者との間の信頼関係破壊はなるべく明確に分けられるべきであり,法人契約と被保険者の個人契約を峻別せず重複契約を認めたことは改められるべきものとした。