2021 年 2021 巻 654 号 p. 654_23-654_42
本稿は,再保険契約におけるFollow the Settlement条項の解釈が問題となった東京地判平成31年1月25日金判1576号20頁の検討を行うものである。 本事件は,これまで我が国においてそれほど議論されてこなかった同条項の解釈を取り上げた点だけではなく,それとともに,企業保険において挿入される約款を解釈する基準を定立する点でも注目に値する。企業保険においては保険両当事者の交渉力・情報に格差はないと想定でき,そのためこれら格差がある者同士で問題となる「約款問題」として解決されるべきではなく, 両当事者が合理的に考えれば理解したと認められる意味に従って約款を解釈することにより,妥当な結論を導き得よう。