保険学雑誌
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【一般論文】
地震保険とJA「建物更生共済」の比較
—商品・仕組,保険と共済の違い,査定態勢—
岩田 恭彦
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2021 年 2021 巻 655 号 p. 655_1-655_30

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抄録

東日本大震災では政府および民間の地震保険から巨額の地震保険金が支払われ公助の補完となる自助の役割を担った。一方,協同組合等が実施する共済からも共済金が支払われ,特にJA「建物更生共済」からは巨額の共済金が支払われた。JA「建物更生共済」は,1954年の仕組開発以来,半世紀に渡り実施されている仕組であり,1961年から2008年に至る40年に渡り地震保険を超える保有契約を有し,その地震補償により地震に対する自助の一端を担ってきた。建物更生共済は,JAが推進を行う共済であるが,連合会組織である全共連が危険を保有する制度共済であり協同組合としての組織的な特徴に共済と保険の違いを見出せる。また,その仕組については,共済の対象種類,範囲,共済期間,共済金の算出方法,傷害共済金,全国一律の掛金体系などに地震保険との違いがあり,補償範囲がやや広い特徴を有する。JA共済は大規模地震を含め自然災害に対して,全国のJA組織による独自の査定態勢を構築し円滑な査定を実施しており,近年はICT技術を活用した損害査定の迅速化を促進している。地震保険や保険商品と異なる経過を経て発展したJA「建物更生共済」であるが,歴史的にも地震に対する自助への貢献は高く,これを適切に評価する必要がある。

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