保険学雑誌
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【一般論文】
企業リスクマネジメントの変遷
—戦後から現在までの日米保険とリスクマネジメントの関係—
前田 祐治
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2022 年 2022 巻 659 号 p. 659_241-659_259

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抄録

本稿では,1960年代から2020年まで,10年刻みで日米の企業リスクマネジメントの変遷を概観することで,保険とリスクマネジメントの関係を明確にする。制度化された企業のリスクマネジメントの始まりは,1960年代の米国における賠償責任保険の保険料高騰の時代である。保険料高騰に苦しんだ米国企業は,保険プログラムに高額な免責を設定することで保険料の軽減を試み,免責部分の損害を自家保険で制度化するために,キャプティブ保険会社を設立した。90年代は金融工学の進展により,保険リスクの証券化,デリバティブ取引を利用したリスクヘッジ手法などが開発され,リスク移転策が保険以外に多様化した。近年では,エンタープライズリスクマネジメント(ERM)が保険会社だけでなく非保険会社にも導入され始めた。ERMのアプローチでは,保険は一リスク移転手法であり,保険マネジメントはリスクマネジメントの中に包含される。

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© 2022 日本保険学会
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