保険学雑誌
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【一般論文】
「リスク選好に関する一考察」
—純粋,投機的,射幸的の3種のリスクにおけるリスク・プレミアムの水準—
星野 明雄
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2022 年 2022 巻 659 号 p. 659_327-659_355

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抄録

保険加入等のリスク回避的選好は,効用関数が凹関数であることを示唆する。一方,宝くじや馬券の購入等のリスク愛好的な行動は,効用関数が凸関数であることを示唆する。両者が同時にみられることは,一様に凹または一様に凸である関数による効用の理解を困難にしている。この困難を解決するため,リスクを純粋リスク,投機的リスク,射幸的(宝くじ等)リスクに3区分し,それぞれの区分に異なるリスク選好が働くと仮定する枠組みが考えられる。この3区分の有効性を確認する目的で,小規模の予備的調査を行い,各選好を表すリスク・プレミアム(当該リスクを回避または追求(獲得)するために人が支払ってよいと考える費用)を測定した。その結果,純粋リスクを回避するためのリスク・プレミアムは大きく,投機的リスクでは相対的には小さいこと,また射幸的リスクでは,逆にリスクを追求(獲得)するためのリスク・プレミアムが大きいことが示唆された。小規模かつ統制の不十分な調査ではあるが,この結果は,上記3区分が有効である可能性を示唆し,さらに,本格的な検討の基礎となりうるものではないかと期待する。

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© 2022 日本保険学会
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