保険学雑誌
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【一般論文】
D&O保険における免責条項の再検討
牧 真理子
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キーワード: D&O保険, 免責条項
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2022 年 2022 巻 659 号 p. 659_305-659_326

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抄録

令和元年会社法改正により,D&O保険に関する規定が新設された。当該改正は D&O保険による填補の内容に関わる免責条項については触れていないため,従前どおり,D&O保険約款により規定されることになっている。そこで,D&O保険約款の免責条項の解釈について,改めて検討する必要もあると考える。本稿は,一般に D&O保険約款の免責事由として規定されている「法令に違反することを被保険者が認識しながら行った行為」について,日本と同時期に D&O保険を受容したドイツを比較対象として,ドイツにおける D&O保険約款の免責条項に関する議論状況を検討するものである。ドイツでは,取締役の経営判断の誤りが責任追及され,注意義務違反があると考えられる場合に,D&O保険約款の免責条項に該当するか,学説上さまざまな説明が加えられてきた。しかし,明確な判断基準は確立しておらず,実務上は,法令や一般的な義務に反して行動していないか,取締役の本質的な義務をもとに解釈している。もっとも,免責条項は,取締役の行動を規律するために機能しているといえる。

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© 2022 日本保険学会
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