保険学雑誌
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【一般論文】
責任保険契約における防御弁護士の利害関係と独立防御の在り方に関する検討
—米国法の検討を中心に—
深澤 泰弘
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2023 年 2023 巻 660 号 p. 660_135-660_158

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抄録

米国では責任保険契約に基づいて保険者が防御活動を行う際に,被保険者と保険者の間で一部の状況において利害が対立する場合があるが,このような場合であっても,保険者が選任し防御を担当する弁護士(防御弁護士)が常に被保険者の利益に反して活動するわけではない。しかし,故意免責等の可能性により責任訴訟と保険担保訴訟で争点が重なる可能性がある場合,防御弁護士は保険者に有利に被保険者に不利に防御活動を行ってしまう危険性がある。そこで,このような場合に限り被保険者が防御を担当する弁護士を選任すること(独立防御)を保険者に認めさせる必要(独立防御の承諾義務)が生じる。これに対して,我が国では被保険者に比較的自由に独立防御が認められているが,保険者側による防御活動の効率性・有用性に鑑みると,仮に保険者と被保険者との間に利害の対立があるとしても,防御弁護士に防御活動を任せる方が望ましいこともあるのではないだろうかと考える。

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© 2023 日本保険学会
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