保険学雑誌
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国内における損害保険会社の社会課題解決への貢献
—取組み事例と企業経営にとっての意義—
丸木 崇秀
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2023 年 2023 巻 660 号 p. 660_45-660_73

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抄録

本稿の目的は,損害保険会社の社会課題解決への貢献のあり方を考えると同時に,社会課題に取り組むことが企業としての損害保険会社にもたらすものについて考察することにある。損害保険会社は,大規模災害対応をはじめとして社会の中で重要な役割を果たしてきているが,SDGsが示すように,企業の社会課題解決への貢献の加速が求められる時代にあって,より幅広い価値を提供する事業体への質的な変化が求められている。均一な保険サービスを提供するために全国をカバーしている拠点網とオペレーション体制や,地域におけるさまざまなステークホルダーとのネットワークといった経営資源(リソース)をレバレッジし,地域コミュニティにおける平時からの連携や災害からの早期復旧・再発防止(強靭化)などにおいて,地域における協働の結び目となって課題解決に貢献する役割が期待される。こうした取組みは,損害保険会社に「社会価値創造人材」の育成や社外との協働機会の増加をもたらし,継続的に変化に対応しイノベーションを生み出すための組織能力の獲得を促す。社会課題解決に向けた取組みは,企業のイノベーション能力と共進化していく関係にある。

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