保険学雑誌
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「生命保険契約における『対価関係』の考察」—令和4年度大会共通論題—
指定変更権の相続制限の廃止
—旧675条2項削除と対価関係—
金尾 悠香
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2023 年 2023 巻 661 号 p. 661_35-661_49

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抄録

保険法制定により,保険法制定前商法675条2項は削除され,第三者のためにする生命保険契約における指定変更権の相続制限が廃止された。同規定は,当初,保険金受取人と保険契約の適切性確保を被保険者の同意に係らしめる趣旨の一環で制定され,第三者のためにする契約の構造外にある被保険者を重視した点で,第三者のためにする生命保険契約を民法上の第三者のためにする契約と異ならせた。保険契約者先死亡は,契約者意思が及ばない関係者変動を発生させ,また制定当初に重視された被保険者の同意も十分には機能しない場面である。同規定削除は,保険金受取人および契約の適切性を確保するために,(被保険者の同意,公序良俗,現行法下での58条含む)他の制度との相互関係や対価関係の検討の必要性を示す。また,同規定削除により,指定変更権の一身専属性は否定され,その財産的性質が強調されたところ,指定変更権の具体的な行使場面と行使権者の限界(債権者代位による行使や詐害行為取消の対象範囲など)は解釈に委ねられたままであり,そのなかで対価関係の役割は今後も検討を要する。

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© 2023 日本保険学会
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