保険学雑誌
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「生命保険契約における『対価関係』の考察」—令和4年度大会共通論題—
問題提起:「固有権」概念の再検証
—対価関係分析の前提として—
大塚 英明
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2023 年 2023 巻 661 号 p. 661_7-661_33

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抄録

第三者のためにする生命保険契約は,基本的に民法の第三者のためにする契約と構造を一にすると言われている。だとすれば,要約者(保険契約者)と諾約者(保険者)との間に補償関係,そして要約者と受益者(保険金受取人)との間には対価関係という法的評価に値する法律関係が形成される。ところが,生命保険の場合,保険金受取人が取得する権利は「固有権」と性質づけられ,ことさらにその独立性・隔離性が強調されるきらいがある。保険法ではこの固有権という概念への依存度が強すぎ,ときとして,なにゆえに保険金受取人に優先的に保険金請求権が帰属するのか,あるいは保険契約者と保険金受取人との対価関係がどのように評価されるのかという実質分析の目を曇らせることさえある。そこで,固有権性から脱却した視点で第三者のためにする生命保険契約を見直し,対価関係についてどのような捉え方をすべきかを提言してみたい。

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© 2023 日本保険学会
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